重要なお知らせ:このウェブサイトは教育目的のみです。法的助言や法的サービスを提供するものではありません。

アメリカ 国籍 取得

アメリカ国籍(市民権)の取得方法を完全解説。帰化の条件、申請手続き、必要書類、市民権テスト、面接対策、費用、処理期間、日本国籍との関係まで詳しくご案内します。

N

NipponToUSA編集部

44 min read
アメリカ国籍取得のイメージ。市民権・帰化申請(N-400)サポート

アメリカ 国籍 取得

アメリカ国籍(市民権)は、帰化(Naturalization)と呼ばれる手続きを通じて永住権保持者が取得できます。帰化申請にはForm N-400を米国市民権・移民局(USCIS)に提出し、英語能力テスト・市民権テスト・面接を経て、忠誠の宣誓式に参加する必要があります。2026年現在の申請費用は760ドル(約11万4,000円)で、処理期間は通常8〜14ヶ月です。

本記事では、日本人がアメリカ国籍を取得するための条件、申請手続きの全ステップ、市民権テストの対策、必要書類、費用、そして日本国籍との関係まで、USCISの公式情報に基づいて徹底的に解説します。

アメリカ国籍(市民権)と永住権(グリーンカード)の違い

アメリカ国籍と永住権(グリーンカード)は混同されがちですが、法的な権利と義務に大きな違いがあります。永住権はアメリカに永住する権利を与えますが、市民権はアメリカ国民としての完全な権利と責任を意味します。

以下の表で、市民権と永住権の主な違いを比較します。

| 項目 | 市民権(国籍) | 永住権(グリーンカード) | | :--- | :--- | :--- | | 選挙権 | 連邦・州・地方選挙すべてで投票可能 | 投票権なし | | 陪審員義務 | 陪審員として召集される義務あり | 陪審員義務なし | | パスポート | アメリカパスポートを取得可能 | 日本パスポートのみ | | 国外居住 | 制限なく海外に居住可能 | 長期の国外居住で永住権喪失のリスクあり | | 強制送還 | 強制送還されない(重大な例外を除く) | 犯罪歴等により強制送還の可能性あり | | 家族の招聘 | 配偶者・子供・親・兄弟姉妹をスポンサー可能 | 配偶者・未婚の子供のみスポンサー可能 | | 公職就任 | 連邦・州の公務員への就任が可能 | 一部の公職に就けない制限あり | | 更新手続き | 不要(市民権は永久) | 10年ごとにグリーンカードの更新が必要 | | 連邦政府の福利厚生 | すべての連邦給付金にアクセス可能 | 一部の給付金に制限あり |

永住権保持者が市民権を取得する最大のメリットは、強制送還のリスクがなくなること、選挙権が得られること、そしてアメリカパスポートによる渡航の自由度が大幅に向上することです。

アメリカ国籍取得(帰化)の条件

アメリカ国籍を帰化によって取得するには、USCISが定める複数の条件を満たす必要があります。帰化の基本条件は以下の通りです。

永住権の保持期間

帰化申請の最も基本的な条件は、永住権(グリーンカード)を一定期間保持していることです。一般的なケースでは永住権取得から5年間の保持が必要ですが、アメリカ市民と結婚している場合は3年間に短縮されます。

永住権の保持期間の要件は以下の通りです。

  • 一般的なケース: 永住権取得から5年間
  • アメリカ市民の配偶者: 永住権取得から3年間(婚姻関係が継続していること)
  • 軍務による特例: 米軍に1年以上服務した場合、永住権の保持期間が免除される場合あり

申請書(Form N-400)は、必要な保持期間を満たす90日前から提出可能です。たとえば、5年間の保持期間が必要な場合、永住権取得から4年9ヶ月の時点で申請できます。

継続的居住(Continuous Residence)の要件

帰化申請者は、申請前の5年間(配偶者ケースは3年間)にわたり、アメリカに継続的に居住している必要があります。継続的居住とは、アメリカを主たる居住地として維持していることを意味します。

継続的居住に関する重要なルールは以下の通りです。

  • 6ヶ月〜1年未満の国外滞在: 継続的居住が中断されたと推定される(反証可能)
  • 1年以上の国外滞在: 継続的居住が完全に中断される(再出発帰化許可証N-470が必要)
  • 中断後のリセット: 継続的居住が中断された場合、新たに4年1日(または1年9ヶ月)アメリカに居住してから再申請が必要

日本への一時帰国や出張が多い方は、国外滞在日数の管理が特に重要です。出入国記録を正確に保管し、6ヶ月を超える国外滞在を避けるようにしましょう。

物理的滞在(Physical Presence)の要件

継続的居住に加えて、帰化申請者は申請前の5年間(配偶者ケースは3年間)のうち、半分以上を物理的にアメリカ国内で過ごしている必要があります。

  • 一般的なケース: 過去5年間のうち30ヶ月(2年半)以上
  • アメリカ市民の配偶者: 過去3年間のうち18ヶ月(1年半)以上

物理的滞在日数は、パスポートの出入国スタンプやI-94の記録に基づいて計算されます。日本との往復が頻繁な方は、渡航記録を詳細に管理することをお勧めします。

年齢要件

帰化申請者は申請時に18歳以上でなければなりません。ただし、アメリカ市民の子供(18歳未満)は、親の帰化に伴い自動的に市民権を取得する場合があります(児童市民権法 Child Citizenship Act)。

善良な道徳的品性(Good Moral Character)

帰化申請者は、申請前の必要期間(5年間または3年間)にわたり、善良な道徳的品性を維持していることが求められます。USCISは以下の行為を「善良な道徳的品性に欠ける」と判断する可能性があります。

  • 殺人罪での有罪判決(永久に帰化不適格)
  • 重罪(aggravated felony)での有罪判決
  • 薬物関連の犯罪
  • 2回以上の賭博関連犯罪
  • 180日以上の禁固刑
  • 偽証罪やUSCISへの虚偽申告
  • 養育費の未払い
  • 所得税の未申告・未納付

軽微な交通違反(スピード違反など)は通常、善良な道徳的品性に影響しません。ただし、飲酒運転(DUI/DWI)は帰化審査に悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。

英語能力の要件

帰化申請者は、基本的な英語の読み・書き・話す能力を持っていることを面接時に証明する必要があります。英語テストの内容は以下の通りです。

  • 読解テスト: 英語の文章を1文〜3文正しく読む
  • 筆記テスト: 英語の文章を1文〜3文正しく書く
  • 会話テスト: 面接官との英語でのやりとり(面接全体を通じて評価)

英語テストには免除規定があります。

  • 50/20ルール: 50歳以上で永住権保持期間が20年以上の場合
  • 55/15ルール: 55歳以上で永住権保持期間が15年以上の場合
  • 医学的免除: 身体的・精神的障害により英語テストを受けられない場合(Form N-648が必要)

免除を受けた場合でも、市民権テスト(公民テスト)は母国語で受験する必要があります。

アメリカの公民知識(Civics Knowledge)

帰化申請者は、アメリカの歴史・政治に関する市民権テスト(公民テスト)に合格しなければなりません。テストの詳細は後述の「市民権テスト(公民テスト)の内容と対策」セクションで解説します。

帰化申請の手続き:ステップバイステップ

アメリカ国籍取得のための帰化申請は、以下の5つのステップで進行します。各ステップの詳細と注意点を解説します。

ステップ1:申請資格の確認

帰化申請を始める前に、上述のすべての条件を満たしているか確認しましょう。USCISは公式ウェブサイトで「帰化適格性チェックリスト」を提供しています。以下の点を特に確認してください。

  • 永住権の保持期間が条件を満たしているか
  • 継続的居住と物理的滞在の要件を満たしているか
  • 犯罪歴や税金の未払いがないか
  • 選択的徴兵制度(Selective Service)への登録が完了しているか(18〜25歳の男性)

ステップ2:Form N-400の提出

Form N-400(Application for Naturalization)は、USCISの公式ウェブサイトからオンラインまたは郵送で提出します。2026年現在、オンライン申請が推奨されており、処理が早くなる傾向があります。

Form N-400に必要な主な情報は以下の通りです。

  • 個人情報(氏名、生年月日、住所、連絡先)
  • 永住権の情報(グリーンカード番号、取得日)
  • 過去5年間の居住歴・勤務歴
  • 過去5年間の国外渡航歴(すべての出入国日)
  • 婚姻歴
  • 子供の情報
  • 犯罪歴の有無
  • 所属団体の情報
  • 善良な道徳的品性に関する質問への回答

申請書の提出と同時に、申請料(2026年現在760ドル)と必要書類を提出します。

ステップ3:生体認証(バイオメトリクス)の予約

Form N-400の受領後、USCISから生体認証(バイオメトリクス)の予約通知が届きます。通常、申請から2〜4週間後に予約日が設定されます。

生体認証の予約では以下のことが行われます。

  • 指紋の採取
  • 写真の撮影
  • 署名の電子記録

採取された指紋はFBI(連邦捜査局)による犯罪歴チェックに使用されます。この犯罪歴チェックの結果は、帰化の審査において重要な判断材料となります。

ステップ4:面接と市民権テスト

生体認証と犯罪歴チェックの完了後、USCISから面接の予約通知が届きます。面接は申請者の管轄USCIS事務所で行われ、通常20〜30分程度です。

面接では以下のことが行われます。

  1. 身元確認: パスポート、グリーンカード、面接通知書の提示
  2. 宣誓: 真実を述べることの宣誓
  3. N-400の内容確認: 申請書に記載した内容の確認と質問
  4. 英語テスト: 読み・書きのテスト
  5. 市民権テスト(公民テスト): アメリカの歴史・政治に関する口頭試験
  6. 追加質問: 面接官からの追加の質問

面接の結果、合格、追加証拠の要求、再テスト、または不合格のいずれかが通知されます。英語テストまたは市民権テストに不合格の場合、60〜90日以内に1回再テストの機会が与えられます。

ステップ5:忠誠の宣誓式(Oath of Allegiance Ceremony)

面接とテストに合格すると、USCISから忠誠の宣誓式の案内が届きます。宣誓式は帰化手続きの最終ステップであり、ここでアメリカ市民としての権利と責任を正式に受け入れます。

宣誓式の流れは以下の通りです。

  1. グリーンカードの返却
  2. 忠誠の宣誓(Oath of Allegiance)
  3. 帰化証明書(Certificate of Naturalization)の受領

宣誓式の完了をもって、正式にアメリカ市民となります。宣誓式当日にアメリカパスポートの申請が可能になり、選挙への投票登録もできるようになります。

市民権テスト(公民テスト)の内容と対策

市民権テスト(Civics Test)は、帰化面接の中で実施されるアメリカの歴史・政治に関する口頭試験です。テストはUSCISが公開している100問の公民問題から出題されます。

テストの形式

市民権テストの形式は以下の通りです。

  • 出題数: 100問の中から10問がランダムに出題
  • 合格基準: 10問中6問以上の正解(60%以上)
  • 形式: 面接官が口頭で質問し、申請者が口頭で回答
  • 言語: 英語(免除を受けた場合は母国語)
  • 再テスト: 不合格の場合、60〜90日以内に1回再テストの機会あり

100問の公民テストの主な出題分野

公民テストの100問は、以下の3つの大きなカテゴリーに分かれます。

| カテゴリー | 出題分野 | 問題数の目安 | | :--- | :--- | :--- | | アメリカの政治制度 | 民主主義の原則、政府の構造、権利と責任 | 約57問 | | アメリカの歴史 | 植民地時代、独立、南北戦争、現代史 | 約30問 | | 統合市民学 | 地理、祝日、シンボル | 約13問 |

出題頻度の高い質問例

以下は出題頻度が特に高い質問の例です。

  • 「アメリカ合衆国の最高法規は何ですか?」 → 回答:Constitution(憲法)
  • 「憲法の最初の10の修正条項を何と呼びますか?」 → 回答:Bill of Rights(権利章典)
  • 「立法府の2つの構成部分は何ですか?」 → 回答:Senate and House of Representatives(上院と下院)
  • 「アメリカの初代大統領は誰ですか?」 → 回答:George Washington
  • 「独立宣言はいつ採択されましたか?」 → 回答:July 4, 1776(1776年7月4日)
  • 「アメリカの国旗の星は何を表していますか?」 → 回答:50州(the 50 states)

市民権テストの効果的な対策

市民権テストの合格率は90%以上と高いですが、十分な準備が重要です。以下の対策方法を推奨します。

  1. USCIS公式教材を活用する: USCISは100問の公民問題とその回答を公式ウェブサイトで公開しています。フラッシュカードや音声教材も無料で利用可能です。
  2. 練習テストを繰り返す: USCISの公式アプリやウェブサイトで模擬テストを何度も受けましょう。
  3. 英語テスト対策も同時に行う: 読み書きのテストにも出題される語彙は、公民テストの内容と重なる部分が多いです。
  4. 市民権準備コースに参加する: 地域のコミュニティカレッジや非営利団体が無料の市民権テスト準備コースを提供している場合があります。
  5. 最新の時事情報を確認する: 現職の大統領、副大統領、連邦議員の名前など、時事的な回答が必要な問題があります。

65歳以上・永住権20年以上の方への特例

65歳以上で永住権の保持期間が20年以上の方は、100問の中から指定された20問のみが出題対象となる特例があります。この20問はUSCISの公式サイトでアスタリスク(*)で示されています。

面接対策と準備のポイント

帰化面接は、市民権テストだけでなく、Form N-400の内容確認と申請者の英語能力の評価を含む総合的な審査です。以下のポイントを押さえて準備しましょう。

面接当日の持ち物

面接に持参する必要がある書類は以下の通りです。

  • 面接予約通知書(Interview Notice / Appointment Letter)
  • 有効なグリーンカード(永住者カード)
  • パスポート(現在有効なもの、および過去5年間に使用したすべてのパスポート)
  • 州発行の身分証明書(運転免許証など)
  • Form N-400のコピー

追加で必要になる可能性のある書類

申請者の状況に応じて、以下の追加書類が求められる場合があります。

  • 婚姻証明書(配偶者ベースの3年申請の場合)
  • 離婚判決書(過去の婚姻歴がある場合)
  • 逮捕・犯罪歴に関する裁判所の記録(該当する場合)
  • 過去5年間の確定申告書(IRS Form 1040)
  • 子供の出生証明書
  • 選択的徴兵制度への登録証明(男性の場合)

面接での注意事項

帰化面接を成功させるために、以下の点に注意してください。

  • 正直に回答する: 虚偽の回答はForm N-400の内容と矛盾し、申請拒否の原因となります
  • わからない質問は確認する: 質問の意味がわからない場合は、面接官に確認を求めても問題ありません
  • 時間に余裕を持って到着する: 予約時刻の30分前には到着するようにしましょう
  • 適切な服装で臨む: ビジネスカジュアル程度の服装が推奨されます
  • N-400の内容を復習する: 申請書に記載した内容(住所歴、渡航歴、勤務歴)をすべて復習しておきましょう

必要書類チェックリスト

帰化申請に必要な書類の完全なチェックリストを以下にまとめます。

基本書類(全員必須)

  • [ ] Form N-400(帰化申請書)
  • [ ] 永住者カード(グリーンカード)のコピー(表裏両面)
  • [ ] パスポートサイズの写真2枚(USCISの規格に準拠)
  • [ ] 申請料760ドル(2026年現在)の支払い証明

身分証明関連

  • [ ] 出生証明書(原本の英語翻訳付き)
  • [ ] 有効なパスポートのコピー
  • [ ] 州発行の身分証明書(運転免許証等)

婚姻関連(該当者のみ)

  • [ ] 婚姻証明書
  • [ ] 離婚判決書・死亡証明書(過去の婚姻を解消した場合)
  • [ ] 配偶者のアメリカ市民権証明(配偶者ベースの3年申請の場合)

その他の状況別書類

  • [ ] 確定申告書の写し(過去5年分)
  • [ ] 選択的徴兵制度の登録証明(18〜25歳の男性)
  • [ ] 裁判所の記録(逮捕歴がある場合)
  • [ ] 養育費の支払い証明(該当する場合)
  • [ ] Form N-648(英語テスト免除を申請する場合の医師の証明書)

費用の詳細

アメリカ国籍取得にかかる費用を以下にまとめます。2026年3月現在の金額です。

| 費用項目 | 金額(USD) | 金額(日本円目安) | | :--- | :--- | :--- | | Form N-400 申請料 | $710 | 約106,500円 | | 生体認証(バイオメトリクス)料 | $0(申請料に含まれる場合あり)〜$85 | 約0〜12,750円 | | 合計(一般的なケース) | $710〜$795 | 約106,500〜119,250円 |

注意: USCISの手数料は変更される場合があります。最新の手数料はUSCIS公式サイト(uscis.gov)で必ず確認してください。

手数料の免除・減額

経済的に困難な場合、手数料の免除または減額を申請できます。

  • 全額免除(Fee Waiver): 世帯収入が連邦貧困ガイドラインの150%以下の場合、Form I-912を提出して全額免除を申請可能
  • 減額(Reduced Fee): 世帯収入が連邦貧困ガイドラインの150〜200%の場合、減額が適用される可能性あり
  • 軍務者の免除: 現役軍人および退役軍人はForm N-400の申請料が免除

処理期間(タイムライン)

帰化申請の処理期間は、申請するUSCIS事務所の管轄地域や申請件数によって異なります。2026年現在の一般的なタイムラインは以下の通りです。

| ステップ | 所要期間の目安 | | :--- | :--- | | Form N-400提出〜受領確認 | 1〜3週間 | | 受領確認〜生体認証 | 2〜8週間 | | 生体認証〜面接予約 | 4〜12ヶ月 | | 面接〜宣誓式 | 当日〜数週間 | | 合計(一般的なケース) | 約8〜14ヶ月 |

処理期間を短縮するためのヒントは以下の通りです。

  • オンラインで申請する: 郵送より処理が早い傾向があります
  • 書類を完全に揃える: 不備があると追加書類の要求(RFE)で遅延します
  • 大都市圏を避ける: ニューヨーク、ロサンゼルスなどの大都市圏は申請件数が多く、処理期間が長くなる傾向があります

USCISの公式ウェブサイトでは、管轄事務所ごとの処理時間を「Case Processing Times」ページで確認できます。

日本国籍との関係:二重国籍の問題

日本人がアメリカ国籍を取得する際、最も重要な検討事項の一つが日本国籍との関係です。日本の国籍法は、成人が自己の意思で外国籍を取得した場合、日本国籍を喪失すると規定しています(国籍法第11条第1項)。

日本の国籍法の規定

日本の国籍法の主要な規定は以下の通りです。

  • 国籍法第11条第1項: 自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う
  • 国籍法第14条: 外国の国籍と日本の国籍を有する者は、22歳に達するまでにいずれかの国籍を選択しなければならない
  • 国籍喪失届: 外国籍を取得した場合、戸籍法に基づき在外公館または市区町村役場に国籍喪失届を提出する義務がある

実務上の取り扱い

法律上は、アメリカ国籍を取得した時点で自動的に日本国籍を喪失します。ただし、実務上の運用については以下の点を理解しておく必要があります。

  • 国籍喪失届を提出しない限り、戸籍上は日本国籍が残る: 実際には国籍喪失届を提出していない方も少なくありません
  • 日本政府は二重国籍を積極的に調査していない: 2026年現在、日本政府が二重国籍者を積極的に調査・処罰した事例は極めて限定的です
  • リスクは存在する: 国籍喪失届を提出しないことは法的義務の不履行であり、将来的に問題が生じる可能性があります

アメリカ国籍取得前に検討すべきポイント

アメリカ国籍取得を検討する際は、以下の点を慎重に考慮してください。

  1. 日本での財産や相続: 日本国籍を喪失した場合、日本での土地所有や相続に制限が生じる可能性があります
  2. 日本への長期滞在: 日本国籍がなくなると、日本への入国にはビザが必要になります(90日以内の滞在はビザ免除)
  3. 年金受給権: すでに受給資格を得た日本の年金は、国籍に関係なく受給可能です
  4. 家族への影響: 日本にいる親族との法的関係に変更はありませんが、相続手続きが複雑になる場合があります
  5. 将来的な法改正の可能性: 日本でも二重国籍を容認する法改正の議論が進んでいますが、2026年時点では法改正は実現していません

この問題については、帰化申請前に日本の法律に詳しい弁護士に相談することを強く推奨します。

アメリカ市民権取得のメリット

アメリカ国籍を取得することで得られる具体的なメリットをまとめます。

法的保護と権利

  • 強制送還されない保護: 市民権保持者はほとんどの場合、強制送還の対象になりません
  • 選挙権: 連邦、州、地方のすべての選挙で投票でき、政治に参加できます
  • 公職就任: 連邦政府や州政府の公務員になることができます(大統領を除く)
  • 陪審員としての参加: アメリカの司法制度に陪審員として参加する権利と義務を得ます

家族関連のメリット

  • 家族の招聘範囲の拡大: 配偶者、子供に加え、親や兄弟姉妹も移民ビザのスポンサーが可能になります
  • 処理期間の短縮: 市民権保持者がスポンサーとなる家族移民は、永住権保持者がスポンサーとなる場合より処理が早い傾向があります
  • 子供への市民権の付与: 国外で生まれた子供にもアメリカ市民権を付与できます

生活上の利便性

  • アメリカパスポート: 世界中の多くの国にビザなしで渡航可能(2026年現在、186カ国にビザなし渡航可能)
  • 連邦政府の給付金: すべての連邦給付プログラムにアクセスできます
  • 国外居住の自由: 永住権のように長期の国外居住で身分を失うリスクがありません
  • グリーンカード更新の不要: 10年ごとのグリーンカード更新手続きが不要になります

帰化申請が拒否される主な理由

USCISによる帰化申請の拒否率は約10〜15%です。拒否される主な理由は以下の通りです。

| 拒否理由 | 詳細 | | :--- | :--- | | 英語能力テスト不合格 | 読み書き・会話テストで基準に達しなかった場合(再テスト後も不合格) | | 市民権テスト不合格 | 公民テストで6/10の正答に達しなかった場合(再テスト後も不合格) | | 善良な道徳的品性の欠如 | 犯罪歴、税金の未払い、虚偽申告など | | 居住・滞在要件の未充足 | 継続的居住または物理的滞在の要件を満たしていない | | Form N-400の虚偽記載 | 申請書に虚偽の情報を記載した場合 | | 養育費の未払い | 裁判所命令による養育費を支払っていない場合 | | 選択的徴兵制度への未登録 | 18〜25歳の男性で登録を怠った場合 | | 税金の問題 | 確定申告の未提出や税金の未納 |

申請が拒否された場合、拒否の理由を示す書面が送付されます。拒否に不服がある場合は、30日以内にForm N-336を提出してUSCISに審査のやり直し(ヒアリング)を請求できます。

特別なケース

軍務による帰化

アメリカ軍に服務している(または服務した)永住権保持者は、帰化において以下の特例が適用されます。

  • 平時の服務: 1年以上の軍務で帰化申請可能(永住権の保持期間の短縮あり)
  • 戦時の服務: 敵対行為期間中に軍務した場合、永住権の保持期間や居住要件が大幅に緩和
  • 申請料免除: 軍務者はForm N-400の申請料が免除
  • 海外での申請: 海外に駐留中でも帰化申請可能

アメリカ市民の子供の帰化

18歳未満の子供がアメリカ市民権を取得する方法は以下の通りです。

  • 児童市民権法(Child Citizenship Act): 親がアメリカ市民で、子供がグリーンカードを持ち、18歳未満でアメリカに居住している場合、自動的に市民権を取得
  • 海外で生まれた子供: アメリカ市民の親から海外で生まれた子供は、一定の条件を満たせば出生時にアメリカ市民権を取得
  • 親の帰化に伴う取得: 親が帰化した場合、18歳未満の子供(永住権保持者)は自動的に市民権を取得する場合あり

高齢者への配慮

65歳以上で永住権保持期間が20年以上の方には、市民権テストの出題範囲が20問に限定される特例があります。また、50/20ルールや55/15ルールにより英語テストが免除される場合もあります。

よくある質問(FAQ)

アメリカ国籍を取得するのにどのくらいの期間がかかりますか?

帰化申請の処理期間は、Form N-400の提出から忠誠の宣誓式まで通常8〜14ヶ月です。ただし、申請する管轄事務所の処理状況や申請内容の複雑さによって期間は変動します。オンライン申請の方が郵送申請より処理が早い傾向があります。

帰化申請に必要な費用はいくらですか?

2026年3月現在、Form N-400の申請料は710ドルです。生体認証料を含めると合計で最大795ドル程度です。経済的に困難な場合は、Form I-912による手数料免除を申請できます。現役軍人および退役軍人は申請料が免除されます。

市民権テストに落ちたらどうなりますか?

市民権テスト(公民テスト)に不合格の場合、60〜90日以内に1回再テストの機会が与えられます。再テストでも不合格の場合、帰化申請は拒否されます。ただし、新たにForm N-400を提出して再申請することは可能です。合格率は90%以上と高いため、USCISの公式教材で十分に準備すれば合格は十分に可能です。

アメリカ国籍を取得すると日本国籍はどうなりますか?

日本の国籍法では、自己の意思で外国籍を取得した場合、日本国籍を自動的に喪失すると規定されています(国籍法第11条第1項)。法的には、アメリカの帰化宣誓を行った時点で日本国籍は失われます。国籍喪失届を在外公館に提出する義務がありますが、届出の有無に関わらず法的には国籍喪失の効力が発生します。

永住権(グリーンカード)を持っていなくてもアメリカ国籍を取得できますか?

帰化によるアメリカ国籍取得には、原則として永住権(グリーンカード)を一定期間保持していることが必要です。永住権を持っていない方は、まずグリーンカードを取得することが先決です。ただし、出生によるアメリカ国籍の取得(アメリカ国内で生まれた場合やアメリカ市民の子供として生まれた場合)は、永住権を経る必要はありません。

犯罪歴があっても帰化申請はできますか?

犯罪の種類と深刻度によります。軽微な交通違反は通常問題になりません。しかし、重罪(aggravated felony)や薬物犯罪、殺人罪などの重大な犯罪歴がある場合は、帰化が永久にまたは一時的に不適格となる可能性があります。犯罪歴がある方は、帰化申請前に必ず移民弁護士に相談してください。

アメリカ国籍を取得した後に放棄(離脱)することはできますか?

アメリカ市民権は、在外アメリカ大使館または領事館で正式な手続き(Renunciation of U.S. Citizenship)を行うことで自発的に放棄できます。放棄の手続きには2,350ドルの手数料がかかり、一度放棄すると取り消すことは極めて困難です。また、アメリカの税務義務は、市民権放棄後も一定期間継続する場合があります。

まとめ

アメリカ国籍の取得(帰化)は、永住権保持者にとって在米生活の集大成ともいえる重要な決断です。帰化申請のプロセスは以下の5ステップで進行します。

  1. 申請資格の確認: 永住権保持期間(5年または3年)、継続的居住、物理的滞在、善良な道徳的品性などの条件を確認
  2. Form N-400の提出: オンラインまたは郵送で申請書と申請料を提出
  3. 生体認証: 指紋採取と犯罪歴チェック
  4. 面接と市民権テスト: 英語テスト、公民テスト、N-400の内容確認
  5. 忠誠の宣誓式: グリーンカードの返却と帰化証明書の受領

帰化申請を成功させるためのポイントは、十分な準備と正確な書類の提出です。市民権テストはUSCISの公式教材で対策すれば合格率は90%以上と高く、面接もForm N-400の内容を正確に把握していれば問題ありません。

日本人にとって最大の懸念事項である日本国籍との関係については、日本の国籍法により法的には日本国籍を喪失することを十分に理解した上で判断する必要があります。帰化を検討している方は、移民弁護士だけでなく、日本の国籍法に詳しい専門家にも相談することを強くお勧めします。

アメリカ市民権は、選挙権、強制送還からの保護、パスポートの取得、家族の招聘範囲の拡大など、多くのメリットをもたらします。長期的な在米生活を計画している方にとって、帰化は検討に値する重要な選択肢です。

免責事項

この記事は教育目的のみであり、法的助言を構成するものではありません。具体的な移住やビジネスの決定については、必ず認可された専門家(弁護士、会計士など)にご相談ください。

N

NipponToUSA編集部

NipponToUSA ライター。アメリカでのビジネスと移住に関する専門情報を日本語でお届けします。

関連記事