l1 visa
L-1ビザ(企業内転勤ビザ)のL-1A・L-1Bの違い・条件・申請方法を完全解説。日本企業の米国駐在に必要な情報がわかります。
Q&A
回答
l1 visa
L-1ビザ(企業内転勤ビザ / Intracompany Transferee Visa)は、多国籍企業が海外拠点の管理職・幹部社員(L-1A)または専門知識を持つ社員(L-1B)を米国の関連会社へ転勤させるための非移民ビザです。日本企業が社員をアメリカの子会社・支店・関連会社へ駐在させる際に最も広く利用されるビザカテゴリーの一つであり、年間発給数に上限(cap)がありません。
L-1ビザの基本要件
L-1ビザの申請には、3つの基本要件を満たす必要があります。
1. 適格な企業関係(Qualifying Relationship) 米国企業と海外企業の間に、親会社・子会社・支店・関連会社のいずれかの関係が存在することが必要です。具体的には、日本の親会社と米国の子会社、日本の本社と米国の支店、または50%以上の株式を保有する関連会社の関係が求められます。
2. 1年以上の勤務実績 申請者は、L-1ビザの申請日から遡って過去3年以内に、海外の関連会社で継続して1年以上勤務していなければなりません。この1年間の勤務は、管理職・幹部職(L-1A)または専門知識職(L-1B)としての勤務である必要があります。
3. 米国での役割 申請者が米国の関連会社で、管理職・幹部職(L-1A)または専門知識を活用する職務(L-1B)に就くことが必要です。単なる一般社員としての転勤はL-1ビザの対象外です。
L-1AビザとL-1Bビザの違い
L-1ビザにはL-1AとL-1Bの2つのサブカテゴリーがあり、対象者と滞在期間が異なります。
| 比較項目 | L-1A(管理職・幹部) | L-1B(専門知識) | |---------|---------------------|-----------------| | 対象者 | 管理職(Manager)または幹部(Executive) | 専門知識保有者(Specialized Knowledge Worker) | | 初回滞在期間 | 3年(新設オフィスは1年) | 3年(新設オフィスは1年) | | 最長滞在期間 | 7年 | 5年 | | 延長単位 | 2年ごと | 2年ごと | | グリーンカード | EB-1Cで直接申請可(労働許可証不要) | EB-2またはEB-3で申請(労働許可証が必要) | | 審査の厳しさ | 管理職・幹部の定義が明確 | 「専門知識」の定義が曖昧で却下率が高い | | 年間上限 | なし | なし |
L-1A:管理職・幹部の定義
L-1Aビザの「管理職(Manager)」とは、組織・部門・機能を管理し、他の管理職や専門職の社員を監督する立場を指します。「幹部(Executive)」とは、会社の経営方針や事業の主要な構成部分に関する意思決定を行い、取締役会や株主に対して直接報告する立場を意味します。
L-1Aの管理職として認められるには、部下の採用・解雇の権限を持ち、日常業務の指揮・監督を行い、組織の上位レベルから権限を委譲されていることが必要です。
L-1B:専門知識の定義
L-1Bビザの「専門知識(Specialized Knowledge)」とは、企業の製品・サービス・研究・設備・技術・経営に関する特別な知識、または企業の国際的な市場における手法や手順に関する高度な知識を指します。
USCISは近年、L-1Bの審査を厳格化しており、単に「経験がある」だけでは専門知識とは認められません。申請者が保有する知識が、外部の労働市場では容易に得られないものであることを具体的に立証する必要があります。
L-1ビザの申請プロセス
L-1ビザの申請は、雇用主(米国の関連会社)がUSCIS(米国市民権・移民局)にForm I-129(非移民労働者の請願書)を提出することで開始します。申請方法には「個別申請(Individual Petition)」と「ブランケット申請(Blanket Petition)」の2種類があります。
個別申請(Individual Petition)
個別申請は、転勤者1名ごとにForm I-129をUSCISに提出する方法です。すべての企業がこの方法を利用できます。
申請の流れ:
- 米国企業がForm I-129を準備 — 申請者の経歴書、企業関係を証明する書類、職務内容記述書を添付
- USCISに提出 — サービスセンター(カリフォルニアまたはバーモント)に郵送
- USCIS審査 — 通常処理で4〜6ヶ月、プレミアム処理で15営業日以内
- 承認後、ビザスタンプ申請 — 在日米国大使館・領事館でビザ面接を受ける
- 米国入国 — ビザスタンプを取得後、米国に入国
ブランケット申請(Blanket L-1 Petition)
ブランケットL-1は、大規模な多国籍企業が複数の社員を迅速に転勤させるための制度です。事前にUSCISから包括的な承認を取得しておくことで、個々の転勤者はUSCISの審査を経ずに直接大使館でビザを申請できます。
ブランケットL-1の利用条件(以下のいずれかを満たすこと):
- 米国に3つ以上の支店・子会社・関連会社がある
- 合計の年間売上が2,500万ドル以上ある
- 過去12ヶ月間にL-1ビザの承認を10件以上受けている
ブランケットL-1の最大のメリットは、処理の迅速さです。USCISの審査をスキップして直接大使館で申請するため、全体の所要期間を大幅に短縮できます。
| 比較項目 | 個別申請 | ブランケット申請 | |---------|---------|----------------| | 適用対象 | すべての企業 | 大規模多国籍企業のみ | | USCIS審査 | 必要(4〜6ヶ月) | 不要(事前包括承認済み) | | 大使館面接 | I-129承認後に申請 | 直接申請可能 | | 全体所要期間 | 5〜8ヶ月 | 2〜4ヶ月 | | 対象カテゴリー | L-1AとL-1B | L-1AとL-1Bの専門知識のみ | | USCIS申請料 | $460 | $460 + $500(不正防止・検出料) |
新設オフィスL-1(New Office L-1)
日本企業がアメリカに新しく子会社や支店を設立する際に利用できるのが「新設オフィスL-1(New Office L-1)」です。米国にまだ事業拠点がない場合でも、L-1ビザで管理職・専門知識社員を派遣することが可能です。
新設オフィスL-1の要件
新設オフィスL-1の申請には、通常のL-1要件に加えて以下を証明する必要があります。
- 物理的なオフィスの確保 — 賃貸契約書またはリース契約書で米国内に事業所が確保されていることを証明
- 十分な事業資金 — 事業を開始し、1年目の運営を維持するための資金証明(日本の親会社からの送金記録、銀行口座残高証明など)
- 詳細な事業計画書 — 1年間のビジネスプラン、組織図、採用計画、売上予測を含む
- 親会社との適格な関係 — 株式保有証明、定款、取締役会議事録など
新設オフィスL-1の注意点
新設オフィスL-1の初回滞在期間は1年間に限定されます(通常のL-1は3年)。1年後の延長申請時に、USCISは事業が実際に運営されており、転勤者が管理職・幹部職(L-1A)または専門知識職(L-1B)として機能していることを厳しく審査します。
延長申請では特に、以下の点が重視されます。
- 米国子会社が実際に事業活動を行っていること
- 米国子会社に申請者以外の従業員が雇用されていること(L-1Aの場合)
- 申請者が管理的・幹部的な職務を実際に遂行していること
- 十分な売上・収益が発生していること
日本企業が新設オフィスL-1を利用する場合、設立1年目の事業運営と組織構築が延長申請の成否を大きく左右します。
L-1ビザからグリーンカード(永住権)への道
L-1ビザの大きなメリットの一つは、グリーンカード(永住権)への移行が比較的容易な点です。特にL-1Aビザ保持者は、EB-1C(多国籍企業の管理職・幹部)カテゴリーで直接グリーンカードを申請できます。
EB-1C経由のグリーンカード申請(L-1A保持者向け)
EB-1Cカテゴリーは、L-1Aビザ保持者にとって最も有利なグリーンカード取得経路です。EB-1Cの主な利点は以下の通りです。
- PERM労働許可証が不要 — EB-2やEB-3と異なり、時間のかかるPERM(労働市場テスト)プロセスを省略できる
- 優先日が早い — EB-1は第一優先カテゴリーのため、ビザ番号の待ち時間が短い
- 処理期間が短い — プレミアム処理を利用すればI-140の審査は15営業日以内
- 日本人には特に有利 — 日本国籍者はEB-1カテゴリーのビザ番号が通常すぐに利用可能(待ち時間なし)
EB-1Cの申請要件:
- 申請者が過去3年以内に1年以上、海外の関連会社で管理職・幹部職として勤務していたこと
- 米国の関連会社で管理職・幹部職に就くこと
- 米国企業が設立後1年以上事業を行っていること
L-1Bからのグリーンカード申請
L-1B保持者はEB-1Cカテゴリーを利用できないため、EB-2(高度な学位を持つ専門職)またはEB-3(熟練労働者)でのグリーンカード申請が一般的です。EB-2・EB-3ではPERM労働許可証の取得が必要で、このプロセスに6〜12ヶ月かかります。
L-1Bの最長滞在期間は5年であるため、グリーンカード申請を検討している場合は早い段階で手続きを開始することが重要です。
L-2ビザ(家族帯同ビザ)
L-1ビザ保持者の配偶者と21歳未満の未婚の子どもは、L-2ビザで米国に同行できます。L-2ビザの主な特徴は以下の通りです。
L-2配偶者のメリット:
- 就労許可(EAD)を取得可能 — L-2配偶者はForm I-765を提出してEAD(Employment Authorization Document)を取得すれば、米国内のどの雇用主の下でも自由に就労できる
- 就労先の制限なし — H-4ビザと異なり、L-2配偶者のEADには就労先や職種の制限がない
- フルタイム・パートタイム可 — 雇用形態の制限もない
L-2の子どものメリット:
- 米国の公立・私立学校に通学可能
- 21歳の誕生日までL-2ステータスを維持可能
- 21歳を超える場合は、別のビザステータスへの変更が必要
L-2ビザの有効期間は、L-1ビザ保持者の滞在期間と同じです。L-1が延長されれば、L-2も同様に延長できます。
L-1ビザ・H-1Bビザ・E-2ビザの比較
日本企業が社員を米国に派遣する際、L-1以外にもH-1BやE-2が候補になります。以下の比較表で各ビザの特徴を整理します。
| 比較項目 | L-1(企業内転勤) | H-1B(専門職) | E-2(投資家) | |---------|------------------|---------------|--------------| | 目的 | 関連会社への転勤 | 専門職での就労 | 投資・事業運営 | | スポンサー | 米国の関連会社 | 米国の雇用主 | 投資家本人または企業 | | 年間上限 | なし | 85,000件(通常枠65,000 + 修士枠20,000) | なし | | 抽選 | 不要 | 必要(抽選倍率は年度により変動) | 不要 | | 最長滞在 | L-1A: 7年 / L-1B: 5年 | 6年(延長条件あり) | 制限なし(2年ごと更新) | | 配偶者の就労 | L-2でEAD取得可 | H-4でEAD取得可(条件あり) | E-2配偶者でEAD取得可 | | グリーンカード | L-1A→EB-1C(PERM不要) | EB-2/EB-3(PERM必要) | 直接の道筋なし | | 転職の可否 | 関連会社内のみ | 雇用主変更可(新しいI-129が必要) | 投資事業に限定 | | 主な要件 | 1年以上の海外勤務 | 学士号以上 + 専門職 | 相当額の投資 | | 申請費用目安 | $460〜$4,460 | $1,710〜$6,460 | $315 |
どのビザを選ぶべきか
L-1ビザが最適なケース:
- 日本の親会社から米国子会社への駐在員派遣
- 管理職・幹部クラスの社員の転勤(L-1A→EB-1Cでグリーンカード取得を視野に)
- 米国に新拠点を設立する場合(新設オフィスL-1)
H-1Bビザが最適なケース:
- 米国企業が直接雇用する専門職(エンジニア、会計士、アナリストなど)
- 関連会社関係のない米国企業で働く場合
- 長期的に米国での就労を希望する場合
E-2ビザが最適なケース:
- 個人投資家として米国で事業を運営する場合
- 大企業の関連会社関係がない場合
- 滞在期間の上限なく長期運営を希望する場合
L-1ビザの費用と処理期間
L-1ビザの申請にかかる費用は、申請方法や追加オプションによって異なります。
政府申請料(2026年時点)
| 費用項目 | 金額(USD) | 備考 | |---------|------------|------| | Form I-129 基本申請料 | $460 | 全申請者に必要 | | 不正防止・検出料(Fraud Prevention and Detection Fee) | $500 | 全申請者に必要 | | ACWIA教育訓練料 | $750〜$1,500 | 社員数25名以下:$750 / 26名以上:$1,500 | | プレミアム処理(Form I-907) | $2,805 | 任意(15営業日以内の審査保証) | | ブランケットL-1追加料 | $500 | ブランケット申請時のみ | | ビザスタンプ申請料(MRV Fee) | $205 | 大使館での面接申請時 |
弁護士費用の目安
L-1ビザの弁護士費用は、個別申請で$3,000〜$8,000、ブランケット申請で$2,000〜$5,000が一般的です。新設オフィスL-1は追加の事業計画書作成が必要なため、$5,000〜$12,000と高くなる傾向があります。
処理期間
| 処理方法 | 所要期間 | 備考 | |---------|---------|------| | 通常処理(Regular Processing) | 4〜6ヶ月 | USCISの審査のみ | | プレミアム処理(Premium Processing) | 15営業日以内 | 追加$2,805が必要 | | ブランケットL-1(大使館直接申請) | 2〜4週間 | USCIS審査をスキップ | | ビザスタンプ(大使館面接) | 1〜4週間 | 面接予約の空き状況による |
プレミアム処理を利用する場合、USCISは15営業日以内に「承認」「追加資料要請(RFE)」「否認」のいずれかの結果を通知します。RFEが発行された場合は追加で数週間〜数ヶ月かかる可能性があります。
L-1ビザ申請時の注意点
L-1ビザの審査で特に注意すべきポイントを解説します。
最も多い却下理由
L-1Aの場合:
- 申請者が実際には管理的・幹部的な職務を遂行していない(現場作業が主な業務)
- 組織が小規模すぎて管理職としての役割が成立しない
- 部下の存在や組織構造が不十分
L-1Bの場合:
- 「専門知識」の立証が不十分
- 申請者の知識が業界で一般的に入手可能な知識にすぎない
- 他の社員では代替できない知識であることの証明が弱い
RFE(追加資料要請)への対応
USCISからRFEを受け取った場合、通常87日以内に回答する必要があります。RFEには具体的な不備が記載されるため、各指摘事項に対して詳細な証拠書類と説明書を提出します。
L-1Bの専門知識に関するRFEでは、社内トレーニング記録、担当プロジェクトの詳細、申請者しか持たない技術的知識の説明などを追加で提出することが効果的です。
よくある質問(FAQ)
L-1ビザの申請にはどのくらいの費用がかかりますか?
L-1ビザの政府申請料は合計$1,710〜$5,265です。内訳はI-129申請料$460、不正防止料$500、教育訓練料$750〜$1,500で、プレミアム処理を利用する場合は追加で$2,805がかかります。弁護士費用を含めると総額$5,000〜$15,000が目安です。
L-1ビザで転職はできますか?
L-1ビザでは、請願を行った企業の関連会社内でのみ就労できます。別の企業グループへの転職はできません。関連会社グループ内の別法人への異動は、新しいI-129の申請により可能な場合があります。転職を希望する場合は、H-1Bなど別のビザカテゴリーへの変更が必要です。
L-1ビザの延長は何回までできますか?
L-1ビザの延長回数に制限はありませんが、最長滞在期間があります。L-1Aは合計7年、L-1Bは合計5年が上限です。最長期間に達した後は、米国外で1年以上過ごしてからでないと再度L-1ビザの申請はできません。ただし、グリーンカード申請中の場合は7年・5年を超えて滞在延長できる場合があります。
L-1AとL-1Bの切り替えはできますか?
L-1BからL-1Aへのステータス変更は可能です。L-1B保持者が米国の関連会社で管理職・幹部職に昇進した場合、新しいI-129を提出してL-1Aへ変更できます。この場合、L-1Aとしての最長7年の計算はL-1Bの期間も含めて通算されます。
日本企業が初めて米国に進出する場合、L-1ビザは使えますか?
日本企業が米国に新たに子会社・支店を設立する場合、「新設オフィスL-1」として申請が可能です。米国にまだ事業拠点がない段階でも申請できますが、物理的なオフィスの確保、十分な事業資金、詳細な事業計画書が必要です。新設オフィスL-1の初回滞在は1年に限定されます。
L-1ビザの配偶者は米国で働けますか?
L-1ビザ保持者の配偶者はL-2ビザで米国に同行し、EAD(就労許可証)を取得すれば自由に就労できます。L-2配偶者のEADには就労先や職種の制限がなく、フルタイム・パートタイムを問わず米国内のどの雇用主の下でも働けます。
L-1ビザからグリーンカードを取得するにはどのくらいかかりますか?
L-1Aビザ保持者がEB-1Cカテゴリーでグリーンカードを申請する場合、PERM労働許可証が不要なため、申請から取得まで約1〜2年が目安です。日本国籍者はEB-1カテゴリーのビザ番号が通常すぐに利用可能なため、待ち時間が短い傾向にあります。L-1BからEB-2/EB-3で申請する場合はPERMプロセスを含め2〜4年かかることがあります。
L-1ビザとEビザのどちらが良いですか?
L-1ビザは既存の多国籍企業の社員転勤に最適で、特にL-1A保持者はEB-1C経由でグリーンカードを取得しやすいメリットがあります。E-2ビザは個人投資家や中小企業に適しており、滞在期間の上限がない点がメリットです。企業規模、米国での役割、長期的な移民計画に応じて最適なビザが異なるため、移民弁護士への相談を推奨します。
まとめ
L-1ビザは、日本企業が管理職・幹部社員(L-1A)や専門知識社員(L-1B)を米国の関連会社に転勤させるための非移民ビザです。年間発給上限がなく、抽選も不要で、L-1A保持者はEB-1Cカテゴリーを通じたグリーンカード取得への有利な経路があります。新設オフィスL-1を利用すれば、米国に新たな拠点を設立する際にも活用できます。
L-1ビザの申請を検討される方は、自社の企業関係の適格性、申請者の職務内容、米国での事業計画を移民弁護士と十分に確認した上で手続きを進めることが大切です。
免責事項
この回答は教育目的のみであり、法的助言を構成するものではありません。具体的な移住やビジネスの決定については、必ず認可された専門家(弁護士、会計士など)にご相談ください。情報は執筆時点のものであり、法律や規制は変更される可能性があります。