アメリカに入国できない人はどんな人ですか?
アメリカに入国できない人の条件を解説。犯罪歴、ビザ違反、オーバーステイ、健康上の理由など入国拒否の主な原因と、拒否された場合の対処法を詳しく説明します。
Q&A
回答
アメリカに入国できない人はどんな人ですか?
アメリカに入国できない人(入国不適格者)は、移民国籍法(Immigration and Nationality Act / INA)第212条(a)に定められた入国不許可事由(grounds of inadmissibility)に該当する外国人です。主な入国不許可事由は、犯罪歴、移民法違反(オーバーステイ・不法入国)、健康上の理由、安全保障上の理由、過去のビザ申請における虚偽申告の5つのカテゴリーに分類されます。これらの事由に1つでも該当すると、ビザの発給が拒否されるか、空港での入国審査で入国を拒否される可能性があります。
犯罪歴による入国不許可(INA §212(a)(2))
犯罪歴がある外国人は、INA第212条(a)(2)に基づきアメリカへの入国が認められません。対象となる犯罪は、重罪(felony)だけでなく、一部の軽犯罪(misdemeanor)も含まれます。
入国不許可となる犯罪の種類
| 犯罪カテゴリー | 具体例 | 法的根拠 | |---|---|---| | 道徳的退廃犯罪(CIMT) | 窃盗、詐欺、横領、傷害、DUI(飲酒運転)の一部 | INA §212(a)(2)(A)(i)(I) | | 薬物関連犯罪 | 薬物所持、薬物売買、薬物製造(大麻を含む) | INA §212(a)(2)(A)(i)(II) | | 複数の有罪判決 | 合計刑期が5年以上となる2件以上の有罪判決 | INA §212(a)(2)(B) | | 薬物密売 | 薬物の国際取引、密輸 | INA §212(a)(2)(C) | | マネーロンダリング | $10,000以上の資金洗浄 | INA §212(a)(2)(I) |
道徳的退廃犯罪(Crime Involving Moral Turpitude / CIMT)は、「善良な市民の道徳観に反する犯罪」と定義されます。日本の刑法では、窃盗罪、詐欺罪、傷害罪、恐喝罪などが該当する可能性があります。交通違反の多くはCIMTに該当しませんが、飲酒運転(DUI)で傷害を伴う場合は該当することがあります。
犯罪歴がある場合の注意点
犯罪歴がある場合でも、「軽微犯罪例外(petty offense exception)」が適用される可能性があります。軽微犯罪例外の条件は、CIMTが1件のみであること、最大刑期が1年以下であること、実際の刑期が6ヶ月以下であることの3つです。この例外が認められれば、CIMTに該当しても入国不許可とはなりません。
薬物関連犯罪には軽微犯罪例外が適用されません。大麻の所持や使用は、たとえ日本や滞在国で合法であっても、米国連邦法では依然として違法であるため、入国不許可事由に該当します。
移民法違反による入国不許可(INA §212(a)(9))
過去にアメリカの移民法に違反した外国人は、INA第212条(a)(9)に基づき一定期間の入国禁止が適用されます。最も一般的な違反は、オーバーステイ(不法滞在)と不法入国です。
オーバーステイ(不法滞在)による入国禁止期間
| 不法滞在期間 | 入国禁止期間 | 法的根拠 | |---|---|---| | 180日以上〜1年未満 | 出国後3年間の入国禁止 | INA §212(a)(9)(B)(i)(I)(3年バー) | | 1年以上 | 出国後10年間の入国禁止 | INA §212(a)(9)(B)(i)(II)(10年バー) | | 1年以上の不法滞在後に不法再入国 | 永久入国禁止 | INA §212(a)(9)(C) |
3年バーは、ビザやESTAの許可滞在期間を180日以上超えて米国に滞在した後に出国した場合に適用されます。10年バーは、1年以上の不法滞在後に出国した場合に適用されます。これらの入国禁止期間は、米国を出国した日から起算されます。
不法入国による入国不許可
正規の入国審査を経ずに米国に入国した外国人(EWI: Entry Without Inspection)は、INA第212条(a)(6)(A)に基づき入国不適格となります。不法入国の記録は、将来のビザ申請やグリーンカード申請においても重大な不利益となります。
過去の強制退去歴による入国禁止
過去に米国から強制退去(deportation / removal)された外国人には、以下の入国禁止が適用されます。
| 退去の種類 | 入国禁止期間 | 法的根拠 | |---|---|---| | 強制退去命令による退去 | 5年間 | INA §212(a)(9)(A)(i) | | 犯罪による強制退去 | 10年間 | INA §212(a)(9)(A)(i) | | 加重重罪(aggravated felony)による退去 | 20年間 | INA §212(a)(9)(A)(i) | | 2回以上の強制退去 | 20年間 | INA §212(a)(9)(A)(i) |
健康上の理由による入国不許可(INA §212(a)(1))
特定の健康状態にある外国人は、INA第212条(a)(1)に基づきアメリカへの入国が認められません。健康上の入国不許可事由は、感染症と精神障害の2つに大別されます。
感染症による入国不許可
米国疾病予防管理センター(CDC)が指定する感染症に罹患している外国人は入国できません。2026年3月時点で入国不許可の対象となる感染症は以下の通りです。
- 結核(活動性) — 活動性肺結核の場合、治療完了の証明が必要
- 梅毒(感染性) — 感染性の段階にある場合
- 淋病 — 未治療の場合
- ハンセン病(感染性) — 感染性の段階にある場合
- CDCが検疫対象に指定した疾病 — パンデミック時の一時的な追加疾病を含む
移民ビザ申請者は、米国大使館指定の医師(panel physician)による健康診断を受ける義務があります。非移民ビザ(観光ビザやESTAなど)では健康診断は通常不要ですが、入国審査官が健康上の問題を疑った場合、CDC検疫官による二次検査が行われることがあります。
ワクチン接種要件
移民ビザ申請者は、CDC指定の予防接種を受けている必要があります。主な必須ワクチンは、麻疹(MMR)、ポリオ、破傷風・ジフテリア(Td/Tdap)、水痘、インフルエンザ(季節に応じて)、COVID-19です。ワクチン未接種の場合は、接種を完了するか、医学的理由による免除(medical waiver)を申請する必要があります。
薬物乱用・中毒による入国不許可
薬物乱用者(substance abuser)または薬物中毒者(addict)は、INA第212条(a)(1)(A)(iv)に基づき入国不適格となります。薬物乱用の判定は、過去の使用歴だけでなく、医師の診断に基づく現在の状態も考慮されます。大麻の使用歴がある場合、たとえ使用した国や州で合法であっても、米国連邦法上は入国不許可の根拠となる可能性があります。
安全保障上の理由による入国不許可(INA §212(a)(3))
テロリズム、スパイ活動、または米国の安全保障に脅威を与える外国人は、INA第212条(a)(3)に基づき入国が拒否されます。安全保障上の入国不許可事由は、米国政府のセキュリティチェックとデータベース照合(TECS、NCIC、NTCなど)によって判定されます。
安全保障上の入国不許可の対象者は以下の通りです。
- テロ組織のメンバーまたは支援者 — テロ組織への資金提供、訓練参加、物資供給を含む
- スパイ活動に従事した者 — 外国政府のために情報収集活動を行った者
- 米国政府の転覆を企てた者 — クーデターや革命活動への関与
- ナチス政権関係者 — ナチス政権下で迫害に関与した者
- 児童兵の徴用者 — 15歳未満の子どもを兵士として徴用した者
安全保障に関する入国不許可事由は、免除(waiver)の取得が極めて困難です。テロ関連の入国不許可は、米国政府の判断がほぼ最終的であり、司法審査も制限されています。
虚偽申告による入国不許可(INA §212(a)(6)(C))
ビザ申請や入国審査において虚偽の申告(misrepresentation)を行った外国人は、INA第212条(a)(6)(C)(i)に基づき永久的な入国不許可となります。虚偽申告による入国不許可は、ビザの種類を問わず、すべてのビザカテゴリーに適用されます。
虚偽申告に該当する行為の例は以下の通りです。
- ビザ面接で渡航目的について嘘をついた(観光と申告して就労目的で入国など)
- 申請書類に虚偽の情報を記載した(学歴、職歴、犯罪歴の詐称)
- 偽造書類を提出した(偽の雇用証明書、偽の銀行残高証明書など)
- 他人のパスポートや身分証明書を使用して入国を試みた
- 過去のビザ拒否歴や入国拒否歴を隠した
虚偽申告の入国不許可には時効がありません。たとえ20年以上前の虚偽申告であっても、発覚した場合は入国不許可事由として適用されます。
空港で入国拒否された場合の手続き
米国の空港で入国を拒否された場合、CBP(税関・国境警備局)職員による手続きが行われます。入国拒否の手続きは通常、「即時退去(expedited removal)」または「入国撤回(withdrawal of application for admission)」の2つのいずれかとなります。
即時退去(Expedited Removal)
即時退去は、INA第235条(b)(1)に基づく手続きで、虚偽申告や書類不備により入国不適格と判断された場合に適用されます。即時退去の影響は以下の通りです。
- 5年間の入国禁止が適用される
- 移民裁判官の前での聴聞(hearing)の権利がない
- 退去命令が米国移民記録に永久に記載される
- 将来のビザ申請時に不利に働く
入国撤回(Withdrawal of Application for Admission)
入国撤回は、CBP職員の裁量により認められる手続きで、入国拒否よりも穏やかな措置です。入国撤回が認められた場合の影響は以下の通りです。
- 正式な入国拒否記録が残らない(ただしCBPデータベースには記録される)
- 入国禁止期間は適用されない
- 次回のビザ申請や入国に対する影響が比較的軽い
- 自発的に次の帰国便で出国する
入国撤回はCBPの裁量であり、権利ではありません。入国撤回を希望する場合は、CBP職員に丁寧に申し出ることが推奨されます。
免除(Waiver)による入国不許可の解除
入国不許可事由に該当する場合でも、特定の免除(waiver)申請が認められれば、ビザの取得や入国が可能になります。主な免除申請フォームは以下の2つです。
Form I-601(入国不許可の免除申請)
Form I-601は、犯罪歴、虚偽申告、不法滞在(3年バー・10年バー)などの入国不許可事由の免除を申請するためのフォームです。I-601免除申請の条件は以下の通りです。
- 申請資格:米国市民または永住者の配偶者、親、子どもがいること
- 証明要件:免除が認められない場合、米国の親族に「極度の困難(extreme hardship)」が生じることを立証
- 申請費用:$930(2026年3月時点)
- 審査期間:通常6〜12ヶ月
Form I-212(強制退去後の再入国許可申請)
Form I-212は、過去に強制退去された外国人が入国禁止期間の満了前に再入国の許可を申請するためのフォームです。I-212申請の条件は以下の通りです。
- 申請資格:過去に強制退去または即時退去された者
- 証明要件:再入国を許可すべき積極的な理由の提示
- 申請費用:$930(2026年3月時点)
- 審査期間:通常12〜18ヶ月
免除申請は複雑な手続きであり、承認率は申請者の状況により大きく異なります。移民弁護士を通じて申請することが強く推奨されます。
渡航前に入国適格性を確認する方法
アメリカへの渡航前に自身の入国適格性(admissibility)を確認する方法は複数あります。入国拒否のリスクを事前に把握し、対策を講じることが重要です。
ESTA申請による事前確認
日本国籍保持者の場合、ESTA(Electronic System for Travel Authorization)の申請結果が入国適格性の初期判定となります。ESTA申請では、犯罪歴、過去の入国拒否歴、特定の疾病などに関する質問に回答します。ESTAが承認されても入国が保証されるわけではありませんが、拒否された場合は何らかの入国不許可事由に該当する可能性があります。
在日米国大使館・領事館への相談
入国適格性に不安がある場合は、在日米国大使館(東京)または領事館(大阪、那覇、札幌、福岡)で非移民ビザを申請し、面接時に領事官の判断を仰ぐ方法があります。ビザ面接では犯罪歴やオーバーステイ歴について正直に申告することが極めて重要です。虚偽申告は追加の入国不許可事由となります。
移民弁護士への事前相談
犯罪歴、過去のオーバーステイ、過去のビザ拒否歴がある場合は、渡航前に米国移民法を専門とする弁護士に相談することを強く推奨します。弁護士は、過去の記録を確認し、入国不許可事由に該当するかどうかの法的判断を提供できます。免除(waiver)申請が必要な場合は、弁護士の支援のもとで渡航前に手続きを開始することが望ましいです。
CBP INFO Center(情報センター)への問い合わせ
CBP INFO Center(電話: 1-877-227-5511)に連絡し、過去の入国記録や入国禁止の状況について問い合わせることが可能です。ただし、具体的な法的アドバイスは提供されません。
よくある質問(FAQ)
犯罪歴があるとアメリカに入国できませんか?
犯罪歴がある場合、犯罪の種類と重さによりアメリカに入国できない可能性があります。道徳的退廃犯罪(CIMT)と薬物関連犯罪が主な入国不許可事由です。ただし、軽微犯罪例外(petty offense exception)に該当する場合や、I-601免除が承認された場合は入国が認められます。犯罪歴がある場合は、渡航前に移民弁護士に相談して入国適格性を確認してください。
過去にオーバーステイしたことがある場合、二度とアメリカに入れませんか?
オーバーステイの期間によって入国禁止期間が異なります。180日以上1年未満の不法滞在は3年間の入国禁止(3年バー)、1年以上の不法滞在は10年間の入国禁止(10年バー)が適用されます。入国禁止期間が経過した後は、ビザを申請してアメリカに入国することが可能です。入国禁止期間中であっても、I-601免除申請が承認されれば入国が認められる場合があります。
ESTAが拒否されたら入国できないということですか?
ESTA拒否は入国不許可の確定ではありません。ESTA拒否の理由には、犯罪歴、過去のオーバーステイ、申請情報の不一致など様々な要因があります。ESTAが拒否された場合でも、在日米国大使館でB-1/B-2ビザを申請し、面接で領事官に状況を説明することで渡航が認められる場合があります。ESTA拒否の理由は通知されないため、弁護士に相談して対策を立てることを推奨します。
大麻の使用歴があるとアメリカに入国できませんか?
大麻の使用歴がある場合、アメリカへの入国が拒否される可能性があります。大麻は米国連邦法(Controlled Substances Act)において依然としてSchedule I規制薬物に分類されています。たとえカナダや米国の一部の州で合法的に使用した場合であっても、CBP入国審査官に大麻使用を認めると、薬物乱用者として入国不許可(INA §212(a)(1)(A)(iv))または薬物関連犯罪(INA §212(a)(2)(A)(i)(II))の適用対象となります。大麻使用歴について質問された場合の対応は、事前に弁護士と相談してください。
入国審査で嘘をつくとどうなりますか?
入国審査で虚偽の申告を行うと、INA第212条(a)(6)(C)(i)に基づく永久的な入国不許可事由が適用されます。虚偽申告による入国不許可には時効がありません。さらに、即時退去(expedited removal)の対象となり、5年間の入国禁止が追加されます。虚偽申告は1回でも発覚すれば永久的な記録として残るため、入国審査では常に正直に回答することが最も重要です。
入国拒否された場合、すぐに別の空港から再入国を試みることはできますか?
入国拒否後に別の空港や国境から即座に再入国を試みることは推奨されません。入国拒否の記録はCBPのデータベースにリアルタイムで共有されており、他の入国地点でも同じ記録が参照されます。再入国を試みた場合、入国拒否の回数が増え、将来の入国やビザ申請がさらに困難になります。入国拒否された場合は、まず帰国し、移民弁護士に相談して入国不許可事由の解消または免除申請を行ってから再渡航を計画してください。
日本で逮捕歴はあるが有罪判決はない場合、アメリカに入国できますか?
逮捕歴のみで有罪判決(conviction)がない場合、原則としてアメリカの入国不許可事由には該当しません。米国移民法上の入国不許可は、有罪判決に基づいて判断されます。ただし、入国審査官は逮捕歴について質問する権限があり、薬物関連の逮捕の場合は、有罪判決がなくても薬物乱用者(substance abuser)としての入国不許可が適用される可能性があります。逮捕歴がある場合は、事前にビザを取得し、面接時に裁判資料(不起訴処分証明書など)を提出できるよう準備しておくことを推奨します。
まとめ
アメリカに入国できない人は、INA第212条(a)に定められた入国不許可事由に該当する外国人です。主な入国不許可事由は、犯罪歴(CIMT・薬物犯罪)、移民法違反(オーバーステイの3年バー・10年バー)、健康上の理由(感染症・薬物乱用)、安全保障上の脅威、虚偽申告の5つです。入国不許可事由に該当する可能性がある場合は、渡航前に移民弁護士に相談し、必要に応じてI-601やI-212の免除申請を行うことが最善の対策です。
免責事項
この回答は教育目的のみであり、法的助言を構成するものではありません。具体的な移住やビジネスの決定については、必ず認可された専門家(弁護士、会計士など)にご相談ください。情報は執筆時点のものであり、法律や規制は変更される可能性があります。